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【コラム】法律お役立ちコラム《離婚_vol16》
妻が夫以外の男性の子を出産した場合、戸籍上どのように扱われるか~嫡出推定と夫の否認権
1 嫡出推定について
妻が不倫をして夫以外の男性との間の子どもを出産した場合、戸籍上、夫の嫡出子として扱われるのでしょうか。
これについて法律は、妻が婚姻中に懐胎(妊娠)した子は夫の子と推定されるとしており、夫の嫡出子として扱われます(民法772条)。
従って、妻が不倫をして夫以外の子を出産した場合でも、その子が夫婦の婚姻中に妻が妊娠した子(具体的には婚姻成立の日から200日後または婚姻の解消・取消しの日から30日以内に生まれた子のことを言います。)であれば、戸籍上、夫の子として扱われることになります。
2 夫の否認権
上記のように嫡出子であることが推定される場合であっても、実際には父子ではないのに、法律上父子として扱われるのは不合理な結果となります。
そこで、民法は774条以下で、夫にその子は自分の子ではないと否認する権利を与えています。
この権利は夫のみに与えられており、しかも子の出生を知ったときから1年以内に裁判を起こさなければならないことになっています。
また、夫が、子の出生後にその嫡出であることを承認したときは、その否認権を失うことになります(民法776条)。
そのため、夫が嫡出であることを承認してしまったり、否認権を期間内に行使しないときは、真実でなくても夫との間の父子関係は確定してしまい、誰からもこれを争うことは出来なくなってしまいます。
3 親子関係の不存在を裁判所に認めてもらう場合
上記の通り夫の否認権が行使されない場合、父子関係が確定してしまうことになりますが、この考えを徹底すると不合理な事態も生じてきます。
例えば、夫が服役のために刑務所に在監中とか、夫婦が事実上離婚状態で長期間別居中であるとかいったように、客観的に見て妻が夫の子を妊娠する可能性がないことが明らかな場合には、生まれた子は嫡出子の推定を受けないという考え方が支配的で、最高裁判所もこれを認める立場を取っています。
従って、このような場合は、夫だけではなく、妻や子、あるいは真実の父親からも、生まれた子は夫の子ではないということを認めてもらうことが出来ます。この場合は1年間という期間制限もありません。